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「不思議なアサガオだねえ」
オッサンも毎日この辺りを通って通勤するのだとか。あたしも毎日通っていたのに、それも大体同じ時間帯だったのに、今回初めてわかった。……靴ヒモばかり見ていたからかな。
とにかくだから、あたしとマチコさん、お母さんとオッサン――南さんという名前だって――は、毎朝、アサちゃんの追っかけをする同志になってしまった。
翌朝は、あたしがナワ跳び、お母さんが掃除機を分解した筒、マチコさんがカサ、南さんがゴルフクラブを持ってその場に集合した。
よく考えればどれも取られちゃったら困るものだけど、……それよりもアサちゃんに何かしてあげたい気持ちの方が勝った。
アサちゃんは、余ったツルの先をぶらんぶらんと揺らして待っていた。
そして、みんなの差し出す細長いものを、くるくるくるくるコイルみたいに巻き進んで、まだまだ伸びていく。
そろそろ町名も変わる辺りにまで来ちゃったけど。
マチコさん、そのワクワク顔じゃあ意地悪ばあさんには見えない。お母さんもクマが取れなかったのに、このところほっぺが赤らんで血色がいい。南さんも蚊の鳴くような声だったのに「よおし!」と空に響く雄叫びを上げる。
あたしも、さてアサちゃんはいつどこでどんな花を咲かすんだろう、と追っかけるのをやめられなくなっていた。
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