61、まずは玄関

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予想通り、病院から帰宅した姑はスッキリと片付いた玄関にびっくり仰天。顔色が変わった。 (…何しろ散らかってるほうが落ち着く人だから) 「玄関にあった棚は?!」 「別の場所に移動しました。玄関になんて邪魔ですよね」 私は平然と答えた。 「邪魔って…中身は?」 「ゴミは捨てて、まだ使えそうなものや売れそうなものは残してありますよ」 姑は目が点だった。 「ほら、お義母さん言ったでしょ? お義父さんが死んだら遠い親戚も来るから家をきれいにしてくれって」 「だからって…」 口ごもる姑に、私は秘策をぶつけた。 「お義父さんのお葬式、家でするんでしょ? どうせその時に玄関の家具は全部、移動させなきゃいけないんだから、今のうちに片付けておいたほうが手間が省けていいんですよ。お義父さん、いつ亡くなるか分からないんだから」 「…………」 普通に考えれば、けっこうな無神経発言ですが、この家は「普通の神経」ではやっていけません。
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