気絶探偵

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 それから、先生は頭を抱えてうずくまった。右頬を殴ったはずなのに、なぜ頭を。そうか、あれは着地の際の痛みだったのだと、ようやく納得がいった。  そして、私はゆっくりと尋ねた。 「あなたは誰でしたっけ、ええと……」  シナリオ通りの台詞を口にする。   「石川だ。さっきまで、キッチンにいて、晩飯を作っていたのに、何が起きたんだ?」 「やった! 成功した!」私は右手に(こぶし)を作り、微笑んだ。前回の事件で偶然、先生が階段から転げ落ちたときのことを再現できたのだ。そして、私は答えた。 「へぇー、犯人は石川だったのか。動機は?」  先生は、あたふたしながら答えた。 「なんのことだ? 俺は知らないぞ」 「私は、気絶沢探偵の助手、月野ぴょん子。気絶沢探偵が、あなたの体に憑依してる間、あなたたちは入れ替わってるの」 「あー、だから、気絶沢の記憶が頭の中に流れ込んでくるのか」  気絶沢先生は気絶した瞬間に、幽体離脱して、犯人の体に憑依するのだ。先生が犯人を知っているわけではない。なぜか、捜査中の事件の犯人に憑依する。
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