気絶探偵

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 おそらく、ひとつの身体には一つの魂しか入ることができない。だから、本人の魂は弾き出され、空いている先生の身体に入る。だから、手錠は欠かせないのだ。つまり、 「犯人の脳から記憶を読み取って、決定的な証拠を見つけて、自分の体に帰ってくるのよ」    突然、先生は左右に首を振った。 「月野くん、手錠を外してくれたまえ」  先生の魂が先生の体に帰ってきて、犯人の魂は、犯人の体に戻った瞬間だ。  犯人が先生になりすます演技の可能性もあるため、私は合言葉を口にする。 「月野ぴょん子は」 「カンガルーの生まれ変わり」  本当にカンガルーの生まれ変わりというわけではない。ぴょん子という名前とパンチ力からそう、からかわれているだけだ。 「犯人は、石川盗人(ぬすっと)。凶器の包丁が自宅の天井裏に隠してあります」  先生の言葉を聞いて、私は、桜田門警部に向かって叫んだ。 「すぐ逮捕して」  警部はすぐにどこかに電話をした。そして、電話を切ると私たちに向かって静かに話し出した。 「自宅に捜査員を向かわせたが、監視程度だ」 「逮捕は?」 「家宅捜査をするのに裁判所からの許可を待たないと。それには、時間がかかる」
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