気絶探偵

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「それでも、現金だけの店はあるし、そもそも、キャッシュレスって信用できないんだよね」    ATMを操作する先生の背中に言った。 「インターネットバンキングは使うくせに」 「あれは、仕事で仕方なく……あれ? 口座に金がない」  先生が青ざめた顔で振り向いた。彼は再度画面を確認し、また、振り向いて焦りと混乱の表情を浮かべていた。   「あ? 先生、石川盗人(ぬすっと)と入れ替わったじゃないですか。先生が石川の記憶を読んだように、石川も先生の記憶を読んだんですよ」 「インターネットバンキングのパスワードとか?」   「こっちの依頼書も読んでないんですね。石川は瞬間記憶できるんですよ。いわゆる天才。ギフテッドっていうらしいですよ。見たこと聞いたことを瞬間に正確に覚えることができるんです」    先生は額に汗を浮かべながら呟いた。 「それ知ってて止めなかったのか?」 「いえ、まさかまた憑依できるなんて思わなかったんですよ」  先生は急に動き出し、私の肩を掴んで言った。 「帰らなきゃ」 「どうしたんですか?」  先生はスマホを取り出すと震える手で操作を始めた。
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