Ⅲ.最期の本音

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Ⅲ.最期の本音

 近付いた俺のことをまじまじと見ると、男は首を傾げた。 「若いね。それにいい男じゃないか。なぜ死のうと思ったの」 「面白くないからです」  即答した。それが本音だからだ。  自分が28歳でまだまだ若いことも、決して醜悪な見てくれでないことも分かっている。きっとまだやれることはあるし、女遊びだって出来る。だがそれを引っ括めて考えたとしても、生きている意味、生きていく意味、これを見出すことが出来ない。 「俺、親も死んじゃってて。兄弟もいないし、本当の意味で孤独の身なんですよ。だから自分のため以外に生きていく理由もないし、自分自身、生きていくに値する楽しみもないんですよね」  初対面の人に対し、饒舌に語ってしまった。互いに消滅する関係という気楽さもあるだろう。捨てる紙に絵を描いているようなものだ。  男はうんうんと頷いた。当然、止めるような素振りは見せなかった。 「なるほどね、分からんでもないな。僕も生きがいを無くしたという意味では似たような立場だ。でも、何で今日なんだい?」 「いや、別に今日じゃなきゃいけない訳じゃなくて。俺、楽しみにしてたゲームの発売日を待ってたんですよ。それを一通りプレイしたので、もういいかなって、思ったのが今日で」 「へえ。ゲーム?」 「はい。アドサガって知ってます? アドミン・サーガ。それの(スリー)の発売を、一応の楽しみにして生きてたんです」  男は眉を寄せながら、少し微笑んだように見えた。 「そのゲーム……どうだった?」 「最悪っすよ」  俺は一つ息を吐くと、誰にも言えなかった不満を、なぜか目の前の男にぶつけていた。 「まずバトルシステムが退化していて。一手一手長考出来るのが楽しさだったのに、リアルタイムバトル導入とか本末転倒なことしてるし。それに育成も自由度が減って劣化しましたね。仲間システムも駄目だな、使えるキャラが減りすぎてて、自分だけのパーティーでプレイ出来ないし」  それを聞いた男は、突然狂ったように大声で笑い始めた。
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