Ⅴ.最期の笑い

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Ⅴ.最期の笑い

 俺は、どうしても訊きたかったことを口に出す。 「尾藤さんみたいな力のある方が、どうして、こんな所に?」 「ああ……僕はさっき君に無意味なことを訊いたね。良い男だとか、そんなことはどうでも良かったね」 「まあ、そうですね」 「同じさ。力があるとかそんなの関係ないよ。僕にとって人生の全て、アドミン・サーガが汚されてしまった。アドサガ3はアドサガじゃない。それにもう、アドサガは僕の手元には戻ってこない。取り返しのつかない馬鹿な契約を結んでしまったからね。だからもう、生きていても仕方がない」  俺は思わず笑ってしまった。尾藤さんは不思議そうに首を傾げる。 「何か、変なこと言ったかな?」 「いいえ違います。俺も尾藤さんも、同じところで同じ日に死のうとしていて、その理由がアドサガ3の出来栄えってことですよね。なんか一致していることが多くて、笑えてきちゃって……」 「ハハハ、言われてみれば、中々すごい偶然だね。僕達のフィナーレが重なった訳だ」  俺は笑いすぎて腹筋が痛くなり、思わず縁に寝そべって笑った。もし今笑い転げたら、そのまま地上に真っ逆さまだろう。なぜこの状況で笑えているのか、不思議だ。 「はあ、はあ、どうします? 一緒に手でも繋いで飛びますか?」 「そんなことをしたら、カップルの心中に間違われないかい」 「アハハ、アドサガカップルの身投げは、一石投じちゃいますね!」  同じように大声を張り上げて笑っていたはずの尾藤さんだったが、突然少し真面目なトーンに戻った。 「もし……君だったら、アドサガの次回作は、どうなるべきだと思う?」
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