こっけん、こっけん。

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こっけん、こっけん。

 学校の七不思議を集めてるんだって?ふんふん、児童小説のネタにしたいと。そういえば、君はOLやる傍ら、副業で小説書いてるんだっけ。もうすぐ児童書の公募があると?なかなか面白そうだ。今回はホラーで挑みたいというわけだ。チャレンジングでいいんじゃないだろうか。  確かに、学校の怪談的な話はブームが途切れなくて凄いと思う。怖い話が好き、という子供は今も昔も変わらず存在しているということに違いない。  ただ、昔からよくある、ありきたりな怪談ではネタにならない。  同時に、時代に合わせてアップデートしていくことも必要だ。人体模型なんか置いてない学校で“走る人体模型”の話をしたってリアリティがないし、二宮金次郎像でもそれは同じ。トイレの花子さんっていうのも名前的に古いものだし、なんなら数十年前程度のビデオテープの怨霊だって今はナンセンスだ。だって、そもそもビデオが再生できるデッキ自体、もはやほとんど流通していないんだから。  だから、あんまり聞いたことがないような斬新なネタがほしい、と。  確かに私も怖い話は好きだし、ちょっとした霊感のようなものもあるけど――そんなに知りたい?なら、本気で怖かったやつをひとつだけ教えてあげよう。  ただし、これだけは約束するように。  何が起きても自己責任。悪いけど、聞きたいとせがんできたのが君である以上、逆恨みされてもどうしようもない。  自分でなんとかできるし耐えられるっていうなら教えてあげてもいい。まあつまり、私が知っているのはそういう話というわけだけど。  これは、私がまだ女子小学生だった時のこと。  当時、私が通っていたのは結構年季が入ったおんぼろの学校だった。私が小学校六年生の時のことだから、もうかれこれ二十五年以上前ってことになる。  さすがに木造校舎なんてことはなかったけど、平成になるずっと前に建てられた校舎はかなりガタがきていた。時々体育館で雨漏りがして、先生達がせっせとバケツを運んでいたのをよく覚えている。廊下にもバケツとか、洗面器?みたいなものが置かれているのを見たことがあるような。耐震構造とかそういうのもなってなくて、ちょっとした地震でも派手に揺れるようなボロい校舎だったのだ。  当時、私は自分の霊感にあんまり自覚がなかった。  多分、変なものが見えたところで、それが生きている人間か死んでいる人間か見分けがつかなかったっていうのも大きいのだと思う。そういう人間は、周りが気付いてない妙なものを無自覚で拾ってきてしまいがちだ。  だから、当初は、あれがそうだとはわからなかった。  そう、音楽室のグランドピアノがやばいなんてことは。
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