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 高校生活三年目に入っても、黒崎隆一は将来の目標が見つけられずにいた。  学業の成績は悪くない。有名大学を狙えるような頭脳があるわけではなかったが、目指せば何処かの大学に入学できるだけの能力はあった。だけど本人にその気がなければ仕方ない。  黒崎の友人の一人に菅良人という男がいた。身長は一六〇センチ半ばと黒崎より少し低めだったが、中学の頃から柔道を習っていたこともあり、筋肉質のがっしりとした体格をしていた。  菅は地元の工場に一早く就職を決めていた。菅には父親がいない。菅の話だと自身が小学生だった頃に事故で亡くなったのだという。それ以来、菅は母親と二人きりで生きてきた。  苦労をかけた母親のためにさっさと就職して生活費を稼ぐ。菅の母親は気にせず進学しても良いと菅に提案していたそうだが、菅は勉強はもう十分だと言って断っていた。 「大学に進学すればいいじゃないか」  そんな自分のことなどお構いなしに、菅は将来を決められずにいた黒崎に進学を提案した。 「金銭的な問題があるわけじゃないんだろう?」 「まあ、そうだけど」  黒崎隆一の家族は、父親の吾郎と母親の洋子、そして吾郎の母親で隆一の祖母のきくがいたが、きくは昨年脳梗塞を発症して入院中だった。
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