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〚 とにかく研究所を一時的に封鎖しないと。
たぶん、さっきの煙の量からして、この部屋以外は無事な筈だわ。
谷原くん、警備員に連絡して、誰も部屋に入れないようにして。
それから別室の私の秘書にも連絡して、外部からの面会と訪問の、
今日のスケジュールはキャンセルさせて 〛
「は、はい、わかりました!」
僕は装置から離れてオフィスの箇所へと走った。
自身のデスクにある通信用電話を取って、番号を押して、警備室と
博士のスケジュールを管理する秘書へと連絡した。
もちろん機械トラブルに関しては伏せて、緊急の実験が長引いていると
説明しておいた。
〚 ありがとう谷原くん。みんな、私が自身の起こした現状について、
自身で責任を持って解決させます。少しだけ待ってください。
谷原くん、機械の点検も、お願いします 〛
そうして林博士が、装置の横に置かれてある実験器具を手にしていく。
ふと暴発の影響なのか熱を持っていた瓶を掴んでしまって......。
「ぬるくなったコーヒー!」」とか、叫んだりしていた。
いつも『だいたいのモノは叩けば直る、ときがある』なんて、言ってて
叩く代わりに蹴る癖のある博士だけど、頭のキレは本物だ。
真剣な目をして本気モードに入った林博士が、コンピュータに数式を
打ち込んで薬品の分量を計っていく。
他の所員たちもスマホで対話しながら持ち場に付き始めた。
「やれやれ、心に作用するだけあって、デリケートだなあ」
僕は僕で、林博士に指示された通りに機械の修理を始めた。
薬を生産する装置の配線を確認してみると、一部が破損していた。
「あぁ、これのせいで暴発したようです。配線の不具合です」
「ぬるくなったコーヒ~っ!」
〚 私が蹴ったせいじゃなかったのね 〛
ちょっとホッとしたらしき林博士が声を出してから書き込んだ。
安心した割には、まだ言語パニックを起こしたままだ。
「とにかく配線をつないで、もう一度、稼働させたいですね。
えっと、ペンチで切ってから、コネクターを......」
ふと、目の前にペンチが出現した。
佐田さんがしゃがみ込んでいて、ペンチを差し出してくれたのだ。
わあぁっ、ちっちゃく丸くなってて可愛いっ!
その淡色柄のロングスカート似合ってますっ!
いやいや外見だけじゃなくて、いつも機転が見事で尊敬してますよ。
いまだって素早くペンチを持ってきてくれた。
とか、声に出すことはできなかったので「佐田さん、ありがとう」
と、言ってから頭を軽く下げた。
そしたら......。
「トマト!」
と、佐田さんが言ってきた。
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