トマトに戸惑う

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「佐田さん......トマトが嫌いなんですか?」 僕の作業する手が止まった。 佐田さんが首を横に振りながら「トマト!トマト!」と、言う。 三つ編み、というか編み込みにしている栗色の髪がパサパサ揺れた。 「佐田さん、僕、イタリアン料理のおいしい店をみつけて。 それで、佐田さんもどうかな?って。 だって、佐田さん、チーズが大好きだって、言ってたから。 そこのラザニアが特に評判が良いんです。でも、トマトはダメ?」 「トマト!トマト!トマト!」 「佐田さん、僕、好きなんです、あ、トマト、トマトが好きで......」 あぁっ!恋の告白をできるチャンスだったのに、誤魔化してしまった! 「ぬるくなったコーヒー!!」 林博士の細く長い指で肩をつかまれた。 そしてスマホ画面を突き付けられた。 〚 個人的な云々してる場合じゃない! 成分の逆効果の発動の仕組みは解析できた! 中和剤を作って機械に入れるから、それ修理して!〛 「さすが!早い!承知いたしました!」 僕は佐田さんからペンチを受け取り、配線を組み直していく。 「トマトぉ~」 佐田さんはトマト以外の何かを言いたそうにしていた。 「佐田さん、スマホは?」 「トマトッ!」と、小さな指でバツマークをつくってきた。 「持ってくるの忘れたんですか?」 佐田さんが、うなづいた。
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