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《序章》
まだあのときは、かわいがってくれていた写真があった。幼いときに使わせてもらっていた小屋を焼かれ、何もなくなった。お気に入りだったおもちゃや、本までも焼かれ、実の母親はなくなり、かわいがってくれうこともなくなった。かわりに怖い義理の母親が来て、私をこき使うようになっていた。あの頃のことを今でも鮮明に覚えている。
ご飯もそのころからあまり食べさせてもらえなかったし、服だってワガママだって許されやしなかった。音を立てて叩かれたこともあった。
ある日の朝早くから私は起こされ、
「お前なんかここに入れてやる!」
そう言われ、人間界の街から離れたところの空いていた小屋に入れられた。
何もしていなかったのに。悪いことなんてしていなかったはずなのに。
しかも、孤狼とその親が小屋の中に住んでいた。
「お前なんか食われてしまえ!」
といわれ、父親はそれをせせら笑うような顔をして私を見ていた。完全に私を馬鹿にしていた。父親はここから大嫌いになった。
死にたかった。にくかった。殺してやりたかった。でもできなかった。だって、子供だから。
親が悪いやつだからという理由で、その子供も悪いやつだと思われていた。そして、何年経っても誰も近寄ってこず、狼と一緒に生活するようになっていた。しかし、狼は大きくなると小屋を出ていってしまった。
私は、一人でいい、一人がいい。いつしかそう思うようになった。一人のほうが何もしなくてもいい。ネガティブになっていった。いや、もっと幼い頃から精神的にやられていたのかもしれない。そんなことがあったことも大きくなるに連れ忘れてしまった・・・。なのに・・・。
義理の母親は嫌い、父親は嫌いということだけははっきりと覚えていた。はっきり覚えていたはずなのにあの城の中に入ってしまうなんて、私には全く知る由もなかった。
山を越え、谷を越えしているうちに、だんだんと幼かった頃の私を思い出していった。それが、今から始まるこの物語である。
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