1,《結界》

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1,《結界》

 ある町外れに、一軒の家があった。そこに一匹の狼が迷い込んできた。 「どうしたの?」 「・・・・・・」 その体は小刻みに震えていて、怯えているかのようだった。  私はとりあえず食べ物を用意した。 「食べる?」 と聞くと首を横に振った。しかし、思い直したのかお皿から取って食べていた。 「美味しい?」 今度は首を縦に振った。 「よかった。」 孤狼が食べ終わると、傷口を塞ぐため包帯とガーゼで押さえた。それも終わると、すやすやと狼は眠りに落ちていった。 (この子は私みたいになって欲しくないな・・・) 私はそう思ったが、どうすることもできないのでやめた。  翌日、私は狼のことを起こすため布団を見るともぬけの殻だった。どこに行ったのかと思い、家の周りを探すと茂みの影に隠れていた。 「どこに行ってたの?」 「・・・・・・」 狼はうつむき気味に答えた。 「あなたは、ここから出たい?」 「なんで?」 「だって、誤解されてるんでしょ?悪い魔女だって。このまま誤解されたままでいいの?」 「良くはないけど・・・。」 「良くないなら、言いにいかなきゃ。」 そういって、狼は森にある結界を解くよう要求してきた。  しかし、結界を解こうにも解き方がわからない。どうにかして、結界を解こうとしたが、力尽きてしまった。  目が覚めると、狼が移動させたのか、ベッドの上に横たわっていて、私のことを孤狼が心配そうに見ていた。 「今日はもう休まないといけないね。」 そういって、私の横で眠りについた。  私はその日夢を見た。私と森を囲っているこの結界は一箇所だけ穴が空いていて、そこから通って、外に出れば結界は解けるらしい。 そして翌日、私は朝早くから孤狼を連れて外に出た。そして、結界に沿って歩くと、ちょうど人間が通れるほどの穴が空いていた。 「ここから、この結界の外に出られるんだよね?」 「・・・そうみたいだね。」 「そういえば、君の名前は何がいい?」 「なんでもいいけど・・・。」 「じゃあギンなんてどうかな。」 「いいね。」 名前の話をし終わると、私は結界にできた穴を通った。結界は解け、やがて消えてなくなった。 「さあ、行こうか。」 そう言われるままに、私はギンについて行った。  数時間ほど歩いただろうか。町中に出た。町の人達にはジロジロ見られることもなく、皆笑って話をしていたり、買い物を忙しくするものがいたりと、様々だった。 「これ、欲しいです。」 「でもお金は・・・」 「お金?お金なんて、山ほどあるよ?」 「・・・そうなの?」 「うん。」 私はそう言って、お金を出し子供向けの杖を買った。 「・・・それ何に使うの?」 「一応魔女だから・・・ね。これないと無理なんだよね。」 「そうなんだ。」 「うん」  そんな話をしながら、私は今夜泊まる旅館を探すため、2時間ほど歩いた後、見つかった旅館に泊まることにした。そして、人々の誤解を解くために本当は嫌だったが明日は、城に乗り込むことにした。
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