3,《悪夢》

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3,《悪夢》

「あなたは悪い子ね。良くない娘。あなたなんて産まなきゃよかった。」  私は、ひどい頭痛で目が覚めた。私のことを、母親がそんなふうに思っているはずがない。そう思うことにした。なのに・・・、こんなことが現実で起こるとは思いもしなかった。  最初はごもごもと何を言っているのかわからなかったが、次第にはっきりと大きな声で怒鳴っているのが聞こえてきた。 「なんであいつが帰ってきちゃったのよ!帰ってこないようにしたのに!」 「まあまあ、落ち着いて。」 「落ち着いてなどいられますか!あいつがいなかったらもっと私は幸せなのに!」 「そうかね。私は違うと思うが・・・。」 「あんたのそういうところが嫌いなのよ!」 「嫌いで良かったよ。私だってあなたと一緒になんかいなくてよかったんだからね。許嫁だから結婚しただけだ!」 「ああそうですか。」 「ああそうだよ。」 「あの・・・」 「結・・・、ちょうどいいところに来たわ。あの子を起こしてきて頂戴。この城から追い出すのよ。」 「はい、了解しました。」 ヤバ!そう思って、ベッドに潜り込んだ。 ガチャ 「起きてください、朝ですよ。」 「おはようございます。」 「おはようございま・・・す」 バシ! 「痛っ!」 叩かれた。何もしていなかったのに・・・。 「さっさと出ていってください。この城から。」 「え・・・」 「さあ早く」 そう言われ、城から追い出された。ギンも一緒に。 「・・・追い出されちゃった・・・ね。」 キュルルルルル・・・ 「お腹・・・空いたね。なんか食べに行こうか。」 「そうだね。」 私達は近くにある食堂へ行くことにした。 「何にする?」 「焼き魚定食にする。心葉は?」 「私もそれにしようかな・・・」 「・・・ごめん、今気づいたんだけどその頬どうしたの?」 「あ、なんでもないよ。」 そういった私を、ギンは優しくなだめた。 「気にするな。気にしたら終わりだよ。」  間もなく、頼んでいた料理が運ばれてきた。 「焼き魚定食です。」 「ありがとうございます。」 少し、元気のない声で返事をしてしまった。 「大丈夫?」 「ウン。大丈夫・・・。」 私は本当は意識が朦朧としていた。だから、そのまま倒れてしまった。 バターン! そのまま気を失った・・・。  起きるとそこは、病院で点滴をされていた。起き上がろうとすると押さえつけられた。 「痛い・・・」 「無理して、起き上がらないでください。危ないですから。」 「はい、すみません・・・。」 「あ、ストレス性の胃潰瘍ですので、無理のし過ぎですね。あまり無理しすぎちゃいけませんよ。」 そういって、病室から出ていった。 「俺、そろそろそばから離れなきゃいけないみたいだ。あんたの母親からの命令だからさ。逆らったら殺されちゃう。じゃあね。」 その顔はまるで、私をせせら笑っているかのようだった。見る限り、悪人の顔だった。 「待って・・・」 「待てないよ・・・、ごめんね。」 そういって、ギンは病院から出ていきお城の方へ向かっていってしまった。 (ギンは城の中に居たんだ。私は監視されてたんだ。) そう思い、惨めな気持ちになった。きっと私は、ギンが近寄ってきても、受け入れはしないだろうな、そう思った。でも、明日には魔法学校に行けるようにしてくれたことだけは、感謝することにした。
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