第1章 罪

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午後19時、大貴は自宅の最寄駅のロータリー付近に立っていた。ロータリーには駅に迎えに来た車やタクシーでごった返している。 視線の先には以前まで自分が通っていた大学の生徒だろうか、若い男女5人組が笑顔で会話をしながら駅構内へと続くエスカレーターに乗り込んでいく姿が見えた。 今も大学に通っていればあのグループの輪の中に自分も居たのだろうか。 そんな事を考えていると、見覚えのある1人の男がこちらに向かって歩いてくる。 夢に出てきたスーツ姿の男ではないことはすぐに分かった。白いTシャツに下は濃い紺色のデニムとラフな格好で現れたのは陵だった。 陵「悪い悪い、待たせて」 大貴「おう…久しぶりだな…。3ヶ月ぶりぐらいか…?」 陵「そうだな。いつものあの店でいいか?」 大貴「うん…」 陵「じゃあ行くか」 会話も早々に切り上げると、2人は駅のロータリーを抜けて繁華街へと続く道を歩いていく。週末の金曜日、道は人でごった返していてすれ違いざまに何度も肩がぶつかる。 田舎から上京したばかりの頃は多くの人が道を行き交う様子を見るだけでもテンションが上がったものだが、今はただただ憂鬱に感じてしまう。人混みの中を掻い潜りながら目的地である大衆居酒屋に到着した。 「いらっしゃいませー!!」 店員の威勢のいい声が店内に響く。 店内はほぼ満席状態だったが、偶然1席だけ空いていたテーブル席へと案内される。 陵「とりあえずビールでいいだろ?」 大貴「うん…そうだな」 メニュー表を片手に店員を呼んだ陵は、ビール2杯と酒のあてとなる一品料理を適当に注文する。店員は笑顔で注文を受けて厨房に戻っていき、しばらくしてビールと料理が運ばれてくるとお互いにグラスを持って乾杯。 1口、2口と渇いた喉にビールが染み渡る。 思い返すと人生で初めてビールが美味いと感じたのがこの居酒屋だった。 高校時代に2人で缶酎ハイなどの酒を買って飲んだりした時は1度も美味いと感じたことはなかったが、上京後に初めてこの居酒屋に2人で訪れて飲んだ安酒のビールが、喉の奥が震えるぐらい美味く感じた。 「少しは大人になったのかもな」 そんなことを当時2人で話していた。 凌「まあ、あの時まだ俺ら未成年だったけどな」 過去を懐かしんで口元がほころぶ陵。 初めてこの店に訪れた時のことを回想しながら当時の思い出話をしていた2人。 グラスに注がれたビールを飲み進めながらお互い無言になり、暫くの沈黙が訪れる。
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