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何も
言わず答えずに
ひたすらに
無言を突き通す私を見て
呆れ果てたようなため息が耳に届く。
「……だって、時兄さっきの人とはこういうことしたんでしょ?」
「……」
「過去の話だし、今更私がどうこう言える立場じゃないのはわかってるけどでも、やっぱり嫌なんだもん」
私が
知らない時兄を
他の人が知っていて
彼女である私が知らないことが
なんだか
負けてる気がして
こういうことに
勝ち負けがあるのかはわからないし
過去が消せないのなら
せめて私も同じところに立ちたいって思った。
「……負けたくないの。私も、同じがいい」
更に
腕に力を入れて
より一層に
時兄の身体へと隙間なく抱きつく。
私にもっと
経験や知識があれば
先に進めたり
何か違うやり方があるのかもしれないけど
何もわからない無知な私には
時兄任せでこうして抱きつくことしかできなかった。
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