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部室にて2
「おお!中田くん走ってる。かっこいいなぁ」
さくらが、水道で筆を洗いながら、呟いた。
この高校の美術室の奥には水道場があるが、そこの窓から運動場がよく見えるのだ。
「やっぱり、モテるだけあるなぁ」
しみじみとしながら、さくらは言った。
そう。蒼はモテるのだ。蒼は、整った顔立ちに、抜群の運動神経、進学校でない高校に入ったことで、相対的に成績もよくなり、特進クラスに属していたことで、女子にかなり人気だった。少女漫画のように、大勢で囲まれるなんてことは勿論ないが、ひそかに「かっこいいよね」とアイドルを見るような視線が女子達から送られていた。
さくらも、なかなかミーハーな性格で、蒼を見つけるたびに、きゃっきゃと一人騒いでいた。
「いいなあ、はづきは。あんなにかっこいい人が幼馴染で」
さくらが言った。
「さくらだって、部長なんだから、部長同士関わりあるでしょ。部長会とか」
「あるけどさあ。拝むのに必死だよ」
真顔で言ったのが面白くて、思わず吹き出してしまった。さくらは、時々冗談か本当か訳のわからないことを言う。
「はづきは、廊下で会うたびに話せるじゃん」
「話しかけられるけど。自分からは話さないからなぁ」
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