《今日の朝》

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《今日の朝》

 今日もインコの世話をする。飼っているのは身体が黄色で瞳が赤いインコだ。名前はルゥと言って、ルゥは目を覚ますといつも目覚まし時計のようのピィピィ鳴く。  女子高校生の中町(なかまち) 愛菜(まな)は行きたくもない学校への時間が来るのだと憂鬱にもなるが、少し元気をもらえるのだ。 「ルゥ~おはよ。今日も元気に鳴くね」 「ピィ! ピィ!」 「はいはい。お水換えてご飯もあげるからね」  せっせと作業をし、ルゥのご機嫌取りをする愛菜ではあったがルゥは近寄ってきて外に出たいと言い出した。  言ってなどはいない。ただ行動でわかるのだ。 「出たいんだね。じゃあどうぞ~」 「ピィ~!」  人差し指を前に向けて手乗りインコになるルゥに愛菜の気持ちが柔らかくなる。普段から嫌いな朝ではあるが、ルゥのおかげで元気になれるのだ。  ルゥがこの世で一番の存在だ。世界でこんなに可愛くプリティで愛らしい子などいないだろう。 「お前は本当に可愛いな~、ルゥ」 「ピィッ」 「……学校行きたくないな」  虚しいくらい呟けばルゥがすり寄ってきた。頬に寄せて擦りつけば太陽のような香りがする。  ルゥなりに「頑張れ」などと応援してくれているのかもしれない。 「ありがとう、ルゥ」 「ピィッ!」  鼻にキスをしてケージに入れて学校へ行く為の支度をする。兄の友樹(ともき)も心配で来てくれたがにっこりと微笑んで朝食を摂り、学校へと向かった。  足取りは重いがルゥのおかげで少し元気になった。今日も乗り越えられる。  そう信じて愛菜は前を向いた。  愛菜の部屋に空間の裂け目ができた。裂け目から懐中時計のようなものが放り投げられた。 「ピィッ?」  ルゥは首を傾げ、ケージの中に入ってきた異物に触れてしまった。  ――ケージが輝き出し、中から現れたのは金髪紅眼(こうがん)の王子であった。 「……どこだ、ここは?」  王子がゆっくりと辺りを見渡しているなかで、手元に輝く懐中時計がきらりと輝いた。
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