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《なんでよっ》
学校を一日サボっても、兄の友樹にも両親にも言わずに眠った。お土産を買っていきたかった買えばサボったことがバレるし時間がなかったのだ。
ケージに入れているルゥを呼びかければ反応が返ってくる。あの王子とルゥとの関係性はわからぬが、それでももっと愛おしい存在になっていた。
「ルゥのおかげで今日は楽しかったよ。……ありがとう」
「マナちゃん!」
「ふふっ。ルゥは可愛いな~」
ルゥに笑いかけてから机の上に置いてある懐中時計に視線を移し触れる。王宮のようなものが彫られた金色の時計に愛菜は口端を緩めた。
「試験、パスできるといいね。ルゥ」
懐中時計を机に置いてベッドに寝転んだ。気が付けば瞼が落ちてくるので慌てて電気を消した。
翌朝になり愛菜は友樹と共に学校に向かった。友樹は不思議なくらい昨日の詮索もされなかった。
愛菜は学校へと着き息を吐いた。――ガラリと引き戸を開ける。
「お、おはよ……」
無反応とは違うひそひそとした声。居心地が悪いほどだ。
だから愛菜はすぐに着席し一時間目の英語の予習をしようとした。
「中町さんさ~、昨日サボったんでしょ?」
「え、な、なに?」
声を掛けてきたのはクラスの中心人物の女子であった。彼女を敵に回すとろくなことがない。しかもサボったのは本当なのでどういう言い訳をすれば良いかわからない。
愛菜は必死で考えた。
「サボった……わけじゃないけど、なんかごめんね。心配させて」
「心配っていうか~、なんていうか~? 羨ましいな~って思っただけだよ。……こんなイケメン連れてさ」
「……えっ?」
見せられたのは写真投稿サイトであった。そこでルゥと愛菜が仲良く肉まんを並んで食べている姿が映っている。
愛菜は唇を噛んだ。
「学校サボってさ、なにやってんの? ま、あんたは成績優秀だし? 良いとは思うけどね。……あ、違うか~。あれってカンニングしていたんだよね?」
――違う、それは濡れ衣だ!
愛菜は叫びたい気持ちを抑え込むが挑発行為は加速する。
「だって今までもそうやってテストの点数取ってきたんでしょ? 美香が言っていたじゃん。『愛菜ちゃんはカンニングしてる』って。先生には気づかれていないみたいだけどさ~」
「……違う」
「は、なに言ってんの。ブス」
愛菜の血が上った。
「お前の方がブスだ、この万年赤点女! 見返したかったら努力して勉強してみろ、バカ!」
「な……あたしになんて口訊いて」
「私は帰るから、じゃあね。万年お馬鹿さん」
愛菜は席を立ちあがりすぐさま帰る支度をした。本当はこんな災いなど起こしたくなかったのに。
心が溺れるほど涙が出た。だが周囲が見つめるなかでは平気な素振りをし、引き戸を開け放った。
「……愛菜」
その様子を親友であった美香が見つめていた。
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