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《裏切り者の和解》
モニター画面には美香がおり緊張気味な顔立ちをしているが、今の愛菜にはそのように見えなかった。逆に自分を追い詰めてきたのだと錯覚してしまう。
「……なんの用?」
か細い声で紡げば美香は「話があるの」そう言った。話とは一体何だろうか。自分がクラスのボスにいじめられてざまぁみろとでも思ったのか。
ルゥを押しのけてドアを叩くように開け放てば――愛菜は苛立ちの顔を見せた。
「私がいびられてさぞ嬉しかったんでしょう? そうだよね。あんたっていっつもそうだよね!」
「ちが、違うよ愛菜! あたしはそういう風に思ったわけじゃないよ!」
「じゃあなに? 私がいじめられて笑っているのを伝えたかったの? カンニング疑惑押し付けて、自分だけ正義ぶってさ」
「そ……それは……」
「よせ、愛菜。この少女はお前と和解したがっているぞ?」
「――ルゥは黙って」
愛菜の威圧するような視線でルゥは肩を震わせて戦慄させた。普段の穏やかで活発な愛菜ではなく、こんなにも感情的な愛菜は見たことがない。
家族を気にして一人で泣く……そんな気遣い屋な彼女の豹変する姿にルゥは驚愕と深い悲しみを抱かせた。
「美香。どうせ私を笑いに来たんでしょ? いいよ、別に。最悪、あんたとは縁切って、不登校になってやる」
「そんなの嫌だよ! ごめんなさい……。あの時はカンニングしないと赤点取るからって――」
「そんな言い訳は通用しないよ。……あんたなんて目障り。――消えて」
言い終わって瞬間、破裂音と頬が瞬間的に痛みを発した。ジンジンと痛みが勝りなにが起こったのかわからなかった。
「このわからず屋! お前の友達が謝罪しに来ているというのに、お前はそんな言葉を吐くのか? 醜いにもほどがある。――俺が会いに来ている愛菜はそんな女じゃない」
「で、でも! 美香は私を裏切って……陥れて…………」
涙がとめどなく溢れて仕方がない。苦しかった。苦しくて仕方がなかった。
絶望の淵で彷徨っていた。ずっと……ずっと……。
「愛菜、本当に……ごめんなさい!」
崩れ落ちて泣き出す美香に愛菜も一緒に共鳴する。溢れるばかりの涙にルゥは肩を落とし、二人の肩にそっと手を置いた。
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