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《誰ですか?》
兄の友樹は妹の愛菜を心配している様子であった。
「大丈夫か? まだ顔色が優れていないぞ?」
通学路が途中まで一緒なので一緒に行ってくれる兄の優しさに感謝しつつ、「大丈夫だよ」なんて嘘を吐く。
フレーム眼鏡から覗く優しげな瞳とウエーブのかかった茶色の髪質が風に揺れる。
「大丈夫ならいいけど……。あんまり無理するなよ?」
「ありがとうね、お兄ちゃん」
「俺は愛菜の味方だからな!」
その言葉が聞けただけで嬉しかった。兄も大好きな一人だ。
そんな兄と通学路で別れ、教室の前で立ち尽くす。息を呑んで引き戸を開けた。
「お、おはよ……」
周囲は気づいたかと思えば無視をするようにそれぞれの話をし始めている。愛菜は肩を落とし席に着いた。
この状態が三か月は続いている。本当はこの場で泣きたいがぐっと堪える。
私にはルゥもお兄ちゃんも居るのだから大丈夫、そう思って授業を受けた。
愛菜が一人でお弁当を食している時も、課外授業で一人行動する時もその姿をじっと見つめる者が居た。
「愛菜、――ごめん」
少女は一人で行動している愛菜に背を向けてほかの友達と一緒に居たのだ。
授業が終わり愛菜は即刻家に帰宅をする。ルンルン気分だ。
明日も学校はあるがそんなことなどどうでもいい。家に帰ってまったりするなり、ルゥと戯れるのもいいだろう。
ガチャリと鍵でドアを開けて手洗いうがいをした。
「ただいま~!」
元気よく部屋に帰ってルゥに癒されようとした時であった。部屋には一人の青年が寝転んでいた。太陽のような金色の髪に赤いジャケットを着て、すらりとしたタイトなパンツを履いている。装飾品も肩やら腰にも携えていた。
「だ、誰?」
愛菜は得体の知れない存在に驚きつつも、不覚にもときめいてしまう。
ルゥは居ないのに。
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