《デート》

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《デート》

 ソフトクリームを食べ終えてルゥと中華街へと赴いた。初めは入り組んだ道に戸惑いつつも人の流れに沿ってみれば意外と道は掴めた。  また何回かは行ったことがあるので感覚でわかるのだ。 「あっ! 江戸清(えどせい)の肉まんだ~! あっちは小籠包もある! ルゥはどっちがいい?」 「肉まんに小籠包? よくわからぬがうまい方が良いな」 「う~ん、じゃあ江戸清の肉まんかな。結構並ぶけど美味しいよ!」  休日まではいかずとも江戸清の肉まんは長蛇の列が並んでいた。ルゥはげんなりとしつつも肉まんの香りに誘われたのか「仕方ないな……」と言って並んでくれる。  数名の女子や女性がルゥを見て黄色い歓声を上げた。スマホを傾けている女性も居る。  盗撮は違法ですよ~などと思いつつ自慢したくなった。彼氏など居たことがなかったので、彼氏ではなくともルゥは愛菜にとっては自慢になっているのだ。  自分たちの番が来てオーソドックスな肉まんを注文した。出来立てほやほやで食欲がそそる。それはルゥも同じのようだ。  ふぅふぅと息を吹きかける。 「いただきま~す! あっつぅ……でも、おいしい!」 「あっつっ……! でも、確かにうまい……な」  離れで食し互いの感想を述べる。やはり老舗だからか肉汁が溢れてとても美味だ。噛むたびに肉がほろほろ溶けてうまみが増す。皮もふわふわでほんのり甘かった。  ルゥが懐中時計を見て舌打ちをする。「愛菜、時間だ」切なげな顔をして懐中時計を空にかざした。 「時計よ、我らを導け!」  肉まんはまだ頬張っているというのに再び光に包まれた。  ――気が付けば家の前に居た。肉まんはまだある。だがルゥは熱々の肉まんを急いで食していた。 「ルゥ、どうしたの? また家に戻って?」 「はふはふっ、うんっ! もう、時間だからな」 「……えっ?」  ルゥはとても言いづらそうな顔をしていた。 「お前と出かけたのは楽しかった。……だが俺は、まだ能力も十分に扱えていない。本当はお前を、その……ラプラス国へ連れて行こうとしたのに」 「……ルゥ」 「だが、海も見られたし肉まんもうまかった。だから、あの……」  ルゥがとんでもないほど顔を赤らめていた。 「…………ありがとう」 「……ふふっ! 私の方こそありがとう、ルゥ。またデートしてください」  愛菜の言葉にルゥは目を見開いたかと思えば口端を弧に描いて白い歯を見せた。  するとルゥは消失し代わりにインコのルゥが現れる。 「ピィッ! マナちゃん!」 「ふふっ! じゃあルゥ、行こうか」  愛菜はルゥを優しく捕まえて家の中に入ってしまった。 「……なに、あれ?」  少女は懺悔を言いたくて愛菜の家に立ち寄った。だが彼女が見たのは、端麗な王子がインコに変化する姿であった。 「どういう……こと?」  少女は問い詰めたかったが愛菜に聞くことができない。――なぜならば、愛菜を孤立に追い込んだのは自分だからだ。
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