妖精からの贈り物

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太陽は空高くにのぼり、ギラギラと照りつける。 「畜生~~! なんて暑さだ。」 額に片手をかざしたジュリアンが、目を細めて頭上の太陽を睨みつける。 ふと座るのにちょうど良い岩をみつけ、ジュリアンはその傍らに大きな荷物を放り投げ、腰を降ろした。 滝のような汗がジュリアンの顔を流れる。 「まったくなんて険しい山なんだ。 頂上まではまだずいぶんありそうだなぁ。 あぁ……こんな所、来るんじゃなかった…」 そう言いながら、水筒の水を喉に流しこんだ。 『だから、皆、やめておけと言っていたではないか。』 背中から不意に聞こえた声に、ジュリアンは口の中の水を噴き出し、激しく咳き込んだ。 『……何をやってるんだ。 おまえはまったく下品な男だな…』 「て、て、てめぇ! 急に出て来るなっていつも言ってんだろうが!」 『いいかげん、馴れたらどうなんだ… おまえは本当に学習能力というものを欠片ほども持ち合わせておらんのだな。』 「う、うるせぇっっ!」 ジュリアンは、エレスに背を向けると、再び水筒を傾けた。 『ゆっくりしていたら陽が沈むぞ。』 「そんなことは言われなくてもわかってらぁ。 とにかく、頂上へはまだずいぶんと遠いみたいだな。 中腹より少し上のあたりに採掘場があるって宿のおやじが言ってたが、採掘場らしきものはまだみつからないもんなぁ。 ま、暗くなるまでにはなんとか着けるだろうさ。」 『急げば昼過ぎには頂上に着けるだろうと言ってたではないか。』 「急げば…だろ? こんな険しい山、急いで歩けるか! それにこの荷物だぞ!」 ジュリアンは足元の荷物に視線を落とす。 『おまえはどこへ行くにもそのつるはしとスコップを手放さんのだな。』 「当たり前だ! 俺は、宝石掘りだぞ! いつでも掘れる態勢にしとかなきゃどうすんだ! あぁ~~!もう、おまえは出て来んなって言ってんだろ! 消えろ、消えろ!」 エレスは、何も言い返さずに姿を消した。
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