妖精からの贈り物

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* 「よぅ、遅いじゃないか。」 ほろ酔い加減の二人の若い男達が、店に入って来た男に手を振る。 「悪かったな、今日は思いの外仕事が長引いてしまってな。 ……おっ、サム爺さん、風邪はもう良くなったのか?」 彼らと同年代に見えるその男はテーブルに着き、カウンターの老人に声をかけた。 「あぁ、一日ゆっくり寝てたら、すっかり治っちまった。」 老人はグラスを磨く手を止め、男に向かって人懐っこい笑みを浮かべた。 「そいつは良かったな。 でも、もう年なんだから、無理すんなよ。」 「人のことを年寄り扱いするな! わしはまだまだこの店で頑張るぞ!」 白髪の小柄な老人は、皺がれた拳に力を込めた。 「その調子なら大丈夫だな! じゃあ、サム爺さん、ビールと何か食べるものを頼むよ。」 「あいよ。」 「おい、そういえば、昨夜のあいつ、本当に行ったのかなぁ?」 「あぁ、あいつか… きっと山の途中で引き返して来るんじゃないか。 なんせ、あの山は、山に馴れた者でもきついからな。」 「確かにそうだな。 俺も学生の頃、友達と頂上まで行ってみようとしたことがあったんだが、傾斜はきついし曲がりくねった道ばかりだ。 しかも、採掘場から先は道らしき道さえないんだ。 途中ですっかりいやになって引き返して来ちまった。」 「普通ならそうなるよなぁ…」 「でも、あいつ、かなり意地になってたぜ。」 「おまえがあんなに馬鹿笑いするからだ。」 「きっと、本気でお宝のことを信じてたんだろうなぁ…」 その言葉をきっかけに、三人の笑い声が上がった。
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