妖精からの贈り物

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「ずいぶんと楽しそうじゃな。」 サム爺さんは、フライドポテトとチキンの入ったバスケットとビールをテーブルの上に置いた。 「あぁ、昨夜来た旅人の話をしてたんだ。 裏山に宝があると聞いて、ずいぶん遠くからやって来たらしいんだ。」 「裏山の宝か…懐かしいのう。 今でもあれを探しに来る奴がいたとはな…」 何かを思い出すように、サム爺さんの瞳が遠くをみつめる。 「全く馬鹿な奴もいたもんだぜ。 そういえば、サム爺さん、あそこにはどんな宝があるって言われてたんだ?」 「おまえさん方、そんなことも知らんのか? これじゃから、最近の若いもんは… 良いか、あそこには、妖精のお宝があると言われてるんじゃ。 なんでもあの山で人間に助けられた妖精が、そのお礼にとあの山にお宝を隠したんだそうだ。」 サム爺さんの言葉に、男の一人が噴き出した。 「なんで、妖精が人間に助けられるんだ? 羽根が木の枝にでもひっかかったか?」 三人はまた大きな声で笑い出す。 「しかも…なんで礼を埋めなきゃならないんだ? そんなことしないで直接渡せばいいじゃないか。」 「わかった!妖精だと思ったのは実は犬だったんだ! で、掘り起こしてみたら好物の骨が出て来たりしてよぉ!」 男達はさらに大きな声をあげて笑い始めた。 「……おまえさん方は、本当に夢がないのう… 良いか、よく聞くんじゃぞ。 そのお宝は特別なもので、100年間土の中に埋めることによって魔力を持ったものになるんだと。 妖精にそう言われた者は、じっと待った。 待ったとは言っても、人間がそれほど生きられるはずもない。 我が子にそのことを伝え、亡くなったそうじゃ。」 「それで、そのお宝が埋められた場所が太陽と月の交わる場所なんだな?」 「そうじゃ。」 「そんな所がどこにあるってんだ? あの世にでも行かなきゃないんじゃないのか?」 そう言って再び大きな口を開けて笑い転がる男達に、サム爺さんは小さなため息を吐いた。 「そういやぁ、その宝っていうのは、ものは何なんだ?」 「それはじゃな…」 その時、店の奥で派手な音がして酔っ払った男が床に倒れ込んだ。 「こりゃ大変じゃ!」 サム爺さんは、倒れた男の元へ走り出す。
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