妖精からの贈り物

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* 「や…やっと着いた…」 ジュリアンは、頂上に着いた事を確認するかのようにあたりを眺めると、その場に荷物を放り投げ、大の字に寝転んだ。 あたりは薄暗くなり始め、気持ちの良い風がそよいでいるというのに、ジュリアンは滝のような汗にまみれ、大きく肩で息をしていた。 『思ったより時間がかかったな。』 「く、くっそー… 涼しい顔しやがって…」 不意に現れたエレスを、ジュリアンは疎ましげに睨みつけた。 『確かに、暑いとは思わんがな。 それにしても、おまえが迷わなければ、もう少し早くに着いたのではないのか…?』 「迷ったわけじゃねぇ! もう少し歩きやすい道がないかと探しただけだ。」 『……で、結局、そんな道はみつからなかった…と。 うろうろするだけ無駄だっな。』 ジュリアンの眉間に深い皺が刻まれ、言い返そうとする気持ちを飲みこむように、彼は水筒の水をぐびぐびと流しこんだ。 「あぁ、腹が減った。何か食うかな。 おっ、あそこにちょうど良い岩があるな。」 わざとエレスを無視するようにそう呟き、ジュリアンはゆっくりと立ちあがった。 やがて、目に付いた岩の所まで歩くと、袋からパンを取りだしかぶりついた。 「……もっとうまいもんが食べたいなぁ……」 ジュリアンはうらめしそうに乾燥したパンをじっとみつめる。 『缶詰があったのではないのか?』 「缶詰ねぇ……開けるのが面倒だ。 今夜はこれを食べたらもう寝る!」 『もう寝るのか? 子供でもまだ起きてる時間だぞ。』 「俺は朝からずっと山歩きして疲れてんの。」 そう言うと、ジュリアンは岩から降りて地面に腰を降ろし、無理やりパンを口の中に押しこんだ。
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