妖精からの贈り物

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「うへぇ…こんな高い山を登れっていうのか!?」 ジュリアンは片手をかざして目を細め、高い山の頂を見上げた。 『誰も登れとは言っていない。 おまえが自らの意思で登ろうとしているだけではないか。』 「それはだなぁ……あぁ、もう良い! おまえと話してるとイライラしてかなわねぇ! しばらく石の中でおとなしくしてろ!」 エレスは何かを言いかけるように口を開けたが、そのまま空気に溶けこむように姿を消した。 「チッ!おまえは良いなぁ… こんな所に入れるから、簡単に俺に運んでもらえる… おまえだけ少しも疲れず、この高い山の頂上まで行けるなんて…ずるいぞ!!」 ジュリアンはそんなことを呟きながら、首から下げた皮袋を何度も小突く。 「……こんなことしてても始まらねぇな。」 ジュリアンはふと我に返ったかのように手を止め、遥か頂上へ続く山道を登り始めた。 ある町で、この町にお宝があるとの噂を聞いたジュリアンは、長い時間をかけ、昨夜ようやく町に辿り着いた。 早速、情報を聞きこもうとジュリアンは酒場に繰り出した。 だがその話をするやいなや、脆くも一笑に付されてしまった。 そんな話はただの御伽噺だ。 あの裏山にあるのは、ろくな石すらも出ない捨て置かれた採掘場だけだということだった。 オパールが採れるという噂が立ち一時は賑わったものの、実際に採れたのは何の価値もない石だとわかり、それからはあの山に登る者はいないという。 「そ、そんな馬鹿な! 俺はちゃんと聞いたんだ。 この町の裏山には、妖精だか天使だかのお宝が眠ってるってな!」 「そうそう、でも、その宝の在り処は、お陽様とお月様が重なる場所なのよ。」 一人の男がしなを作り女性の声色でそう言うと、その場にいた男達は、鼓膜が震える程の大きな笑い声を上げた。 (畜生!馬鹿にしやがって! こうなったら、絶対にお宝をみつけてやるからな!) ジュリアンは、床が抜けそうな程にどすどすと足を踏み鳴らしながら、店を後にした。
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