再会

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マキは結婚前、大企業でバリバリ働いていた。 だけど28歳の時に結婚してから16年間、夫の希望で働いていない。 あまりにもブランクが長過ぎる。 何か特別な資格があるわけでもない。 雇ってくれる所を探すのは、かなり大変だと思われた。 ただでさえ女のプライドが傷ついている所に、さらに色んな会社からお断りされまくるなんて、とても耐えられる気がしない。 将来の自分が困ることは分かっていても、どうしても社会に出る気になれなかった。 (マジメにやったって、どうせ人生にはイヤなことが起きるんだし…) とりあえず慰謝料が尽きるまでは無気力なままでいると、マキは選択した。 一日でも長く慰謝料だけで生活していけるよう、マキはお金を使わない暮らしを心がけた。 生鮮食品を買う以外、出かけることも、お金を使うことも控えた。 だけど、ずっと家にいるのは節約のためだけでもない。 やりたいことがぼんやりと思い浮かんでも、実際に行動を起こす気力がわかなかった。 高校時代の友人が、子ども食堂を運営するNPO法人の代表理事をしている。 マキが何もしていないことを知ると、手伝って欲しいと声をかけてくれた。 だけどマキは、子どもとかかわりたくなかった。 子育て経験がないことは、マキにとってコンプレックスだ。 マキの気持ちを理解した友人は、無理に子ども食堂に誘うことはなかった。 だけどNPOが集まるフェスに付き合いでブースを出すことになり、どうにも人手が足らず、再びマキに声がかかった。 「一日だけだから、ブースの店番を手伝って欲しいの、お願い」 子どもの相手をする仕事でもないし、一日だけならとマキは引き受けた。 友人の手助けのつもりだったけれど、やってみると良い気分転換になった。 (新しいことをするのも、人とかかわるのも、新鮮な気持ちになれるな。やってみると楽しいな) そんな風にマキは感じた。 フェスの打ち上げがあることは、事前に友人から聞いていた。 「私は、ただの手伝いだから」とマキは最初、断っていた。 だけど久しぶりに多くの人と話して気分が高揚したマキは、もう少し誰かと一緒に過ごしたい気持ちになった。 ブースの片付けが終わった後、友人から再び打ち上げに誘われると、参加をするとマキは返事した。
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