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打ち上げの席で偶然、隣に座ったのがムラカミという男だった。
(いかにもNPOの人って感じだな)とマキは思った。
鎖骨の辺りまである長い髪を一つにくくり、オデコにはバンダナを巻いている。
サラサラのロン毛ではなく、無精で切っていない感じ。
よく日に焼けて浅黒い肌に、剃り残した髭。
屈託なく思いきりニコっと笑う笑顔。
見たことがないエスニックな柄の、裾はキュッと絞ってあるけどダボダボのズボン。
素足に、手作りっぽいサンダル。
なんとなく(サラリーマンがオフの日だけこの格好をしても、着こなせないよな)とマキは思った。
挨拶代わりにいきなり握手を求められた時は驚いたけれど、外国を長く旅してきたような雰囲気がムラカミにはあった。
初対面なのに、手に触れることを躊躇させない説得力をマキは感じた。
「NPO法人 ドラゴンの代表をやっています」
と自己紹介をされても、何をやっている団体なのか、見当がつかなかった。
犯罪加害者の家族のサポートをやっていると聞いて
「何で、ドラゴンなんですか?」
とマキは素直に聞いてみた。
「小さい頃、流行ってたんですよ、ドラゴン。なにか格好いい名前をつけたいと思った時、これしかないと思いました」
「ドラゴンボールですか?」
「いえ、燃えよドラゴンです」
後で分かったことだけれど、ムラカミはマキより八つ年上だった。
自分の団体に名前をつける時、知っている中で最も格好いい単語にしたと言うムラカミを、マキはおもしろいと思った。
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