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なんだか今日は雰囲気が違う。「最近、仕事の調子はどう?」と軽い雑談を振っても返事してくれないし、単純な作業みたいな感じで運転している。
私がそう思ってしまうのは、彼の表情のせいもあるのだろうか。
明るさなんて全くなく、むしろ悲しみの色。
まるで別れ話を切り出そうとするかのような……。
でも。
彼が私を振るなんて、そんなはずはない。
思い当たる原因も理由も、私には何もないのだから。
私たちはラブラブな恋人同士なのだ!
お互いの両親への顔合わせはまだだけれど、そろそろそんな雰囲気。いつプロポーズされてもおかしくない、と思っていたほどなのに……。
そんなことを私が考えていると、彼が語り始める。
「そこで君が聞いてくれているのか、あるいは聞いていないのか。僕にはわからないが、それでも言っておくけど……」
私とは目を合わせずに、前を向いたまま。半ば独り言のような口調だった。
「……ほら、そろそろ見えてきただろう? 大きな交差点があって、その先の緩やかなカーブのところだ。あそこだよ、タイヤが破裂したのは」
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