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「お嬢さん、どこにすんでいるので?」
「…言えません。」
「訳アリってわけか。」
美丈夫が腕を組んだ。
「……、身分は‥何だい?」
「…言えません。」
沈黙が流れた。ふたりとも私を持て余しているようだった。
その時、私の頭であることをひらめいた。
「あ!あの!」
「ど、どうしたんだよ!!」
美丈夫が目を吊り上げて聞いてくる。
「住み込み女中として働かせてください!」
「はァ!?」
「ちょ…ちょっと‥お嬢さん、突然どうしたんだ…」
私は身を乗り出した。
よく考えればここは優良物件ではないか。
部屋はどうやら人気が無い部屋がいくつもあったことから余っているようだし、ここなら西園寺家から離れている。
ここがどういう団体なのかもよく知らないが、道場が見えたことからきっと何かの部隊なのだろう。
となると男所帯。
当然女中の手はいくらでもほしいはず。
私は自分で自分の推理に感心した。
「お願いします!私を住み込ませてください!」
しばらく頭を下げていた。
縛られた腕が痛くなってきても、下げ続けた。
「…、いいだろう」
「やった!」
私はガバっと頭を上げる。
「ただし!」
美丈夫がビシッと人差し指を突きつけてくる。
「女中はもう一人はいるんだ。お前、いいところ箱入り娘だろ。手が違う。それは水仕事なんかしねえ手だ。だったら女中仕事は手伝うだけでいい!そのかわりしっかり覚えろ。」
・・・・ずいぶんわかりにくい。
眉間にシワを寄せたのが暗い中でもわかったのか、もうひとりの男がいった。
「つ、つまり、最初は女中仕事見習いをして住み込んで、慣れてきたら本格的にやってほしい。無理はしないように。そういいたいんだよ。歳は。」
美丈夫は顔をしかめそっぽを向いていた。
どうやら事実らしい。
「お、お前をここに置くのも身寄りのない娘を壬生浪士は門前払いしたって言わせないためだからな!」
…美丈夫は年の割にずいぶん幼いらしい。
こうして、私は名前も知らない部隊で過ごすことになった。
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