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第三章 朝は明けない
障子から漏れる光で目が覚めた。
西園寺家では、いつもいつも彼が起こしに来ていた。
そんな事を考えながら、与えられた、居候にしては広すぎる四畳半の部屋を見回していた。
当たり前だけど、西園寺家のようにいい匂いがする部屋でもなく、なにか装飾があるわけでもなく、質素で殺風景な部屋。
安そうな箪笥が一つ、文机と座布団が一つずつ。襖の中に布団を入れながらそんな観察をしていた。
あの美丈夫が来ないうちに着替えなくてはと急いで着替える。
彼は、よく着替えている私の部屋に入ろうと企んでいた。
大人っぽい容姿のくせにやることは童そのものの彼と毎朝格闘という名の早着替えをしていたため、着替えはすぐに終わった。
涼しい浴衣だ。
そういえば、この浴衣も彼が送ってくれたものだっけ。
まあいいや。
使えるだけ使ってしまおう。
そこはありがたく思うようにする。
仕方ない。これしかないんだから。
何度も言い聞かせて私は持参した持物の中から鏡を取り出した。
薄っすら化粧をして、持参したものをすべて風呂敷の中にいれると、襖の奥にしまう。
そして、ゆっくりと部屋を出た。
ありがたい?ことに美丈夫の部屋の隣の部屋を使わせてもらっているため、安全だ。
こそこそっと美丈夫の部屋を訪ねる。
「失礼します。」
「おう、入れ。」
美丈夫の部屋は6畳間だ。
美丈夫は大量の書類に埋もれながら、なんとか私の座る場所を作ると向かい合った。
「そういやお前さん、名を聞いてなかったな。」
「東雲雪乃と申します。」
三つ指を立てて頭を下げる。
顔を上げると、美丈夫は目を見開いていた。
「し、東雲?!」
「はい。東雲ですが。」
「東雲って…、まさかとは思うが、公家の?」
「さあ?」
肩を上げて見せるが美丈夫は突如顔を青ざめる。
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