寡黙は損

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寡黙は損

(あっ、やっぱり満員か⁉ しかも第一コースには6人ものご婦人が浸かっている。まさか・・教室? 本来この時間帯の教室はプログラムされていな筈だ。だから私はこの曜日を選択している) 「今日って教室ありましたっけ? これってもしかして有料の教室ですか?」 私は片手でメガホンを形成すると見張り台に座る係員に小さく呟いた。 「いいえ、あれは教室では無くお客さんが勝手に集まっているだけです、雑談しているだけでほとんど泳いでいないみたいですね、注意しても糠に釘って感じです」 (これか⁉・・同じジムのメンバーでもある呼吸器科の医師が愚痴っていた『まるで芋の子を洗うように混みあっていて泳ぐところなんて無い』ってね・・思い出した)  他のコースにも目を向けたが2人か3人が一つのレーンを互いで気遣いながら泳いでいる。これ以上同じコースで泳ぐと事故を起こすようなものだ。  私は少し時間をつぶすつもりで、歩行コースに足を入れてみた。でも底のタイルに滑って上手く歩けない。 (そうか、私の足指の付け根が痺れている所為でタイルが掴めないんだ、これじゃ運動にならない)  でもコースに平行に張ってある仕切りのロープをつかむことで、そう、まるでつり橋を渡っている感じで何とか前に進むことができた。 (あっ! いつもプールで一緒になるあの若い青年がやってきた、でも叔母さんばかりでもう割り込む余地なんて無い筈だが? 私事だがつい最近、同じようなことがあったのを思い出した。A叔母さん一人が先に泳いでいたので、『御邪魔します』って声を掛けたら、隣のコースのB叔母さんとお友達だったようで、二人は顔を見合わせるとまるで男の私が婦人便所にでも足を踏み入れたような、迷惑そうな苦笑と共にAさんはB叔母さんのコースに移動してしまったことがある、ホント気分が悪かった) (あっ、そのコースは既に3人の叔母さんが先客で泳いでいるから駄目!・・あれあれ割り込んで浸かってしまった。  アイツ若いのに恥ずかしくないのかね・・しばらくするとなんと叔母さんたち3人とも居なくなっていた、こんな場合『寡黙な男は馬鹿を見る』ってことなのだろうか⁉) そんなことわざなんて聞いたことないよね。
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