1人が本棚に入れています
本棚に追加
支給日がのびる?
スポーツジムでは泳いでもないのに今日は時間を食ってしまった。
以前、役所から封書で案内があり、今日がその指定日だ。
『年金の支給額について』とだけで詳細は来庁時に説明するとのことだった。
「すみません、少し遅れたみたいで」
「あっ根津さんですよね、今来られたとこですか? ちょうど説明が終わってしまったところなんですが・・あっ、あの方の後ろに座ってお待ちください」
(説明が有ったんだ? それなら前の人に尋ねてみよう)
私は、前に座っている同年配の方にそれとなく尋ねてみた。
「すみません、私、少し遅れてしまって、これまでどんな説明があったのか知りたくて、よろしいですかね?」
「なんだか、国の年金の積み立て金が危うくなって来たので、支給額を減額するのがいいか、支給年月日を数か月のばすのがいいとか、そんな説明でしたけどね」
「そんなのどちらも嫌ですよ、 支給額を増額する話ならともかく・・それに支払い年月日がのびるだなんて、それまでどうして暮らすんですか? それにそんなことを伝えるために私たちをここまで呼び出す必要があるんですかね?」
「そんなの、私に文句云われても、私も受給者なんですよ、あっ、来ました来ました」
今までざわめいていた50人程の空間が一斉に静まり返った。
「皆さん、お忙しい中お集まりいただきまして申し訳御座いません。本来なら厚労省の係員が出向くべきお願い事なんですが、人材不足のおり私たち市の職員で対応させていただくことになりました」
「何なんだよ、人を呼びつけておいて急に年金を下げるとか、支給日がのびるなんて、そんなのこれまで聞いてねえぞ」
「そうですよね、ご心配はごもっともです。でも皆さん全員というお話ではありませんので、まずは御安心くださいませ」
全員じゃない⁉ まさか抽選で決めるとか言い出すんじゃ無いだろうね? そんなの許さねえぞ! これまでここに居る皆が日本の高度成長時代を死に物狂いで支えてきたというのに。
最初のコメントを投稿しよう!