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願いを叶えるために
トーマスは沈痛な表情で、エリカに訊ねた。
「なぜ、俺にも看取らせてくれなかった?」
しかし、決して責める口調ではなかった。
「ノーラが望んだから。パパは泣いちゃうから、それを見たくないからって。こうも言ってたわ。自分も泣いちゃうから、パパに涙を見せたらいけないからって」
トーマスはぐっと拳を握った。
「⋯俺は、見たかったよ。ノーラが素直に泣くところ。困らせてほしかった。引き留めやしないから、生きてるって顔を見たかった」
涙を喉に押し込むように、トーマスは言った。
「この子は、普通に埋葬できるのか? ただの死者として扱ってもらえるのか?」
エリカはかぶりを振る。
「無理でしょうね。遺体は必ず解剖されて、あなたが望むような葬儀はできない。解剖と研究に何年かかるかも分からない」
「⋯では、どうすれば」
そこでエリカは、強く言葉を述べた。
「リサイクルしましょう。ノーラの願いを叶えるために」
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