期待値込みの計画

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期待値込みの計画

エリカの説明はこうだった。 まず、死亡診断書は自分が書く。死亡広告は出さず、葬儀も執り行わない。幸か不幸か、ノーラは重い病気だったと知られている。トーマスには死亡広告すら出さなかったという責めを負ってもらうが、その点についてはエリカが書面にて(かば)うと伝えた。 ノーラの遺体は、鳥の羽を全て刈り取り、なるべく人間に近い状態でフィンチ家の墓に入れる。 肝心のリサイクルについては、刈り取った羽を加工して土に(かえ)し、ミミズなど大量の蠕虫(ワーム)に食べさせる。それを自家飼育する鳥に与え、卵を産ませる。蠕虫はノーラのDNAを取り込んでいるため、上手くすれば新種の鳥が生まれる可能性がある。 動物保護の観点からは禁忌的だが、当面の間は生まれる鳥を自家飼育に留め、固有種に影響を及ぼさないよう配慮する。 そして新種が生まれた暁には、徹底的に検査をし、それが生態系を破壊するようなら総殺処分も検討する。 おそらく種が固定された頃、ノーラのDNAも安定して引き継がれるだろう。 極めて遠回りで時間はかかるが、ノーラを悪者にさせないための努力だ。エリカは自家飼育を資金面で援助しつつ、ノーラの物語を脚色なく書き、自費出版するつもりだと話を締めくくった。 「あの子の願いは、大空を飛ぶこと。まだ当分は我慢してもらわなきゃいけないけど、絶対に夢を叶えるのよ。私とトーマス、仲間は二人だけ。でも、きっとあの子は飛べるようになる。そのために、頑張りましょう」
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