ベッドのそばで⋯

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ベッドのそばで⋯

エリカがノーラを診るようになって、一年ほどが経過した。 羽毛は全身に行き渡り、かろうじて頭部だけはそれから逃れていた。 かなりの激痛を伴うと予想されるが、すべての羽を引き抜いてみようか。エリカはそう思ったが、踏み(とど)まった。 前に調べたときよりも、血管や神経との癒着が酷くなっている。全身の癒着剥離なんて夢物語だ。たとえば癌のように、鳥の細胞が体内に残っていれば再発しかねない。容易に想像できることは、引き抜くことによるショック死だ。その可能性が高い以上、無理はできない。 エリカは自宅ベッドで浅い息をする彼女に、そっと訊ねた。 「ノーラ、今、(つら)い? 痛みはある? 我慢しなくていいのよ。正直に言ってみて」 すると彼女は、小さく笑った。 「つらくても、痛くても、エリカにはどうにもできないでしょ?」 確かに、鎮痛薬が効かない、と言うかそもそも人間の薬が効かない。殺してしまうのを覚悟で鳥類用の薬を投与したこともあったが、まったく何も効果がなかった。 「そうね。ねえノーラ、あなた死にたい? それとも、早く鳥になりたい?」 じきに終わる、彼女の人生。どこが境界線か分からないが、残された時間は多くない。 「⋯うん。早く死にたいし、できるなら鳥になりたい。もう我慢しないで済むなら、どっちでもいいの」 たびたび出る、我慢という言葉。そこに悲哀を感じずにはいられない。 「ノーラは、何を一番我慢しているのかしら?」 これも胸に刻まなければ、記すことなどできやしない。
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