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「…………り」 「ん……」 「……り……、琴里、着いたぞ」 「うーん……?」  何度か名前を呼ばれ、その声が律のものだと気付いた私は眠い目を擦りながらゆっくり瞼を開くと、 「――わあ! 綺麗!」  満天の星空が目に入り、思わず声を上げた。  しかもここは海岸近くのようで、星空が水面に映って空も海も星で一杯だった。 「どうだ?」 「すごい! すごく綺麗でびっくりした!」 「そうか。なら良かった」  私が笑顔ではしゃいでいると、律はつられたのか笑い返してくれる。 「でも、どうして?」 「……お前、前に言ってたろ? たまには夜景の綺麗な所とか行きたいって」  その言葉に私は胸がキュンと鳴るのを感じていた。 (覚えてて、くれたんだ……)  私が言った何気無い言葉を覚えていてくれた事がすごく嬉しくて、 「律!」 「おわっ!? 危ねぇな、いきなり」  私は勢い良く律の肩に寄りかかる。 「……急に、こうしたくなったの。駄目……だった?」 「――駄目じゃねぇよ」  言って律は私の肩を抱き、二人で目の前に広がる星空を無言で眺めていた。 「なぁ琴里」 「何?」 「お前はさ、俺のどこが好きなわけ?」 「え? 何……急に」  突然の質問に驚いた私は顔を上げて律を見ると、何故か表情が寂しげで何だか胸が苦しくなった。 「……そ、そんなの決まってるでしょ!? 大人のくせに、家事全般出来なくて、だらしなくて……」 「って、それダメなとこばかりじゃねぇか」  質問の答えと違うことを口にした私にツッコミを入れてくる律。 「最後まで聞いてよね! ……そんなダメダメなとこばっかりだけど……いざって時は強くて、頼りがいがあって……それで……面倒臭いって言いながらも……私の事を一番に思ってくれるところが……私は好きだよ」  今のはほんの一部。  好きなところなんて、キリがないくらいある。  だって私は、律の全てが大好きだから――。
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