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「あんな奴に隙を見せるな。俺が居なかったらどうなってたか分かるだろ?」  そして、今度は優しく髪を撫でてくれる律に、 「……り、律は、どうして?」  あの時、教室まで来た律の行動を不思議に思っていた私が問い掛けた。 「着いた時、校門近くに車停めてお前に連絡しようとしたらアイツが校舎に入ってくのが見えてな。勝手に入るのはどうかと思ったが、何となく嫌な予感がしたから裏門に停め直して入ってみたら案の定……って訳だ」 「……そう、だったんだ……」  律の言葉を聞いて私は身震いした。  だって、あと少し遅かったら、私は新田に何されていたかを考えると、怖くて怖くて堪らなくなってしまったのだから。  私は反射的に律の服をキュッと掴む。 「もう怖い事はねぇから安心しろ。ったく、しかしアイツとんでもねぇな……とにかく、アイツに隙見せるな。 二人きりにもなるな。 いいな?」  律の表情はいつになく真剣で、こんなにも心配されている事がどうしようもなく嬉しかった。 「……うん」 「よし、良い子だ。んじゃ帰るか」  車内の空気は先程までと一変して穏やかなものになり、私の頭をポンと撫でた律は再び車を走らせた。  私は、すごく恐い思いをしたけど、それは決して無駄ではなかったと思った。  だって、律がこんなにも心配してくれたのは初めてだったから。
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