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 あの一件以降、律は以前にも増して引きこもるようになった。  私がアパートへやって来てもどこか上の空で煙草をふかし、昼間からビールを飲んでテレビを観てる。  せっかく受けた執筆の仕事にも手を付けず、訪れる変わらない毎日をつまらなさそうに過ごしていた。 「律、さっき井岡さんが来たよ?」  とある休日、昼寝と言って昼過ぎから寝ていた律が夜になってようやく起きたので、寝ている間にあった事を話す。 「へぇ……」  けれど律はそんな私の話を面倒そうに聞き流しているだけで、目すら合わせず用意した夕食に手をつけていた。 「締め切り、今週中なんでしょ?」 「…………」 「ねぇ、律――」  何を言っても面倒そうな顔をするだけで黙ったままの彼に『聞いてるの?』と続けようとした私の言葉は、律のある行動によって遮られた。 「ちょ……、り……つ」  律は箸を乱暴にテーブルの上に置くと私を床に押し倒し、 「うるせぇよ、黙ってろ」  私の腕を押し付けるように力強く抑えながら上に跨り、冷たい瞳で見下ろしてくる。  そして、乱暴にブラウスのボタンが外されていく。 「や……っ」  そんな律が怖く思えてしまった私はどうすればいいのか分からず、抵抗する事も忘れ、震えながら固まってしまっていた。 「り、つ……やめて……」  何とか声を出せたものの、私の抗議する声などお構いなしに律は私の首筋に顔を埋めると、首筋、鎖骨へ吸い付くように唇をあてがい、跡をつけているのだと分かった。  こんな、欲望任せの行動、普段の律なら絶対しない。 「律……離して、止めてっ!」 「うるせぇって、言ってんだろ?」  相変わらず冷たい瞳で私を睨み付けると、今度は乱暴に私の唇を塞いでくる。 「んんっ……」  流されちゃ駄目――そう思うものの、激しい口付けに私の身体からはどんどん力が抜けていく。
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