2

10/22

169人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
 私と律は、まだ身体の関係を持った事はない。  求められた事が無いわけじゃないけど、私は律と付き合うのが初めてで、好きだけど、まだ心の準備が出来てなかった。  それは律も分かってくれていて、焦らなくていいと言ってくれていた。  好きって言われないけど、なんだかんだで大切にされてると思ってた。  だから初めてで怖い気持ちは未だあるけど、それでも、大好きな律なら大丈夫、そう思っていたのだ。  でも、初めてがこんな、欲望任せで愛の無い行為なんて、いくら大好きな律でも……堪らなく嫌だった。  気付けば私の瞳からは涙が溢れてきていたようで、私の頬を伝う涙を見た律は、 「…………悪い」  冷静さを取り戻したのか、私から目を逸らすと身体を解放してくれた。  私はそんな彼の言葉に何も答えられず、涙を拭い、身体を起こして乱れた服を無言で直していく。 「――ちょっと出てくる」  そして、律はスマホと財布をポケットに入れると、私を置いて一人家を出て行った。  私はそんな律の背中を、ただ見送る事しか出来なかった。  それから一時間程が経った頃、静まり返った部屋にインターホンが響き渡る。  鍵を持って出て行かなかった律が鳴らしたのかと思い、私は確認もせずに玄関のドアを開けると、そこに居たのはこの前一度この部屋を訪ねて来た律のお兄さんだった。 「君はこの前の。こんばんは。律、居るかな?」 「……あ、こんばんは。律は……今、ちょっと出てます……」  律から話を聞いてるからか、あまり良い印象の無いお兄さんを前に、少し戸惑い気味になってしまう。  そんな私をお兄さんはニヤつきながら、まるで品定めするかのようにまじまじと見つめてきた事で少し恐怖を感じた私は早くドアを閉めたい気持ちでいっぱいだった。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

169人が本棚に入れています
本棚に追加