2

11/22

165人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
「……あ……あの……」  何も言わないお兄さんに、声をかける。 「ああ、ごめんね。ちょっと律に用があるんだよね。待たせてもらってもいいかな?」 「え? いや、それは……」 「いいよね?」  良いと言っていないのに、そう強引に確認を取ると、無理矢理部屋へ入ろうとしてくる。 (ど、どうしよう……勝手に上げたら律が怒りそうだし、それに……何か、この人と二人きりには、なりたくない) 「あのっ、こ、困りますっ!」  何とか彼を押し留め、必死に追い返そうとしていると、 「何してんだよ」  横から低い声が聞こえてきた。 「律……」  ちょうど帰って来た律はお兄さんと私の間に割って入り、庇うように立ってくれる。 「何の真似だ?」  より一層冷ややかな口調でお兄さんに問う律。 「やだなぁ、そんな怖い顔するなよ? ちょっと律に用があってさ、中で待たせてって頼んでたんだよ」 「無理矢理入ろうとしてたみたいだが?」 「そんな事ないよね?」  お兄さんは私に同意を求めてくるけど、怖かった私は何も答えず律の後ろに身を隠した。 「あれ? 嫌われちゃったかな?」 「とにかく、金輪際今みたいな真似はするな。それから、この前も言ったが、俺の方に用はない。話す事もない。帰ってくれ」  それだけ言うと、律は私の手を引いて部屋に入り、ドアを閉めて鍵をかけた。  暫くすると、玄関の外から人の気配が消えて行く。 「あ、あの、律……」 「何で開けたんだ?」 「ご、ごめんなさい……律、鍵持って行かなかったから、だから、律かと思って……」 「馬鹿野郎! こんな時間に確認もしないで開けるな!」  静かな部屋に律の怒声が響き、私は何も言えずに俯いた。  すると、 「……悪い、元は俺のせいだよな……」  そう言いながら律は私の頭を優しく撫でてくれた。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

165人が本棚に入れています
本棚に追加