夢の舞台へ

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 あれは確か、今から十六年前。小学一年生の頃。  近所に住んでいる湊がウチに遊びに来ていた時、ダイニングテーブルの上に置いてあったものについて聞かれた。毎月発売しているバスケットボールの本だ。 『これ廉が読んでるの?』 『あー、違う。それはお父さんが買って読んでるやつ。昔から好きなんだって』 『ふーん。やったことないけどバスケって面白いのかな』  興味を持った湊にキッチンにいた親父が食いついて、急遽プロの試合を観に行くことになったんだっけ。  湊を連れて行っていいか確認しに行った時の、おばさんの驚いた顔は今でも覚えている。  当時は今みたいに人気がなくて、当日券も発売していた。こんなに大きなアリーナなんてなかったし、市民体育館で試合をしていた。全席指定じゃなくて、二階は自由席だった。 『廉、バスケ選手ってめちゃくちゃかっこいいな! 俺もなりたい』 『そうか! 頑張れば湊くんもなれるかもしれないぞ』  俺が答えるより先に、親父がそう答えていた。  湊とクラブチームの初心者コースに入会した時は、とっても嬉しそうだったな。まぁ、俺は向いてなくて続かなかったんだけど。
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