夢の舞台へ

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 その日の夜。  夕飯を済ませてから帰ると、親父が珍しく酔っぱらっていた。いつになくご機嫌な理由は聞かなくても分かる。 「れーんー、俺が湊くんを育ててやったんだぞぉ? 湊くんが皆の前でそう言ってくれたんだ。凄いだろう」  いやいやいや、間違ってる。 「育てたのは別の人達で、きっかけをくれたのが親父と俺って言ってただろ」 「こら、廉。余計なこと言わないの。長くなるわよ」 「そうだったかぁ? まぁ、似たようなものだ。んー? 何だお前も観に行ってたのか? 言ってくれたら一緒にチケット取ってやったのに。行きたい試合がある時は俺に言え」  マジか! 隣で観戦するのは恥ずかしい気もする。でも良い席で観たい。  おめでとうと伝えるため、部屋に移動してから湊にメッセージを送った。笑い話として親父が酔っぱらって言っていたことも。  しばらくして「あながち間違ってないかも」と返ってきたが、間違ってるに決まってる。調子に乗るから本人には言わないでくれよ。  湊は夢を叶えた。  次は俺の番だ。一人前のスポーツライターになって、いつか専門誌に湊の記事を書くんだ。  その時、湊が日本代表選手だったら最高だな。
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