いつも大事にしてくれていたのに

1/1
前へ
/2ページ
次へ

いつも大事にしてくれていたのに

 夫の三郎は、いつも家族を大切にしてくれている。  家事も目いっぱい手伝ってくれて、ペットの猫も目いっぱい可愛がってくれて、一生を共にできると思って、安心しすぎていたのかもしれない。  今、義母が同居することになり、三郎はその手続きや、会社の仕事、団地の理事の仕事におわれ手いっぱいである。  三郎は何でも一人でやっている(つもりである)。もちろん自分の手一杯家事もしてくれて、食事の用意もしてくれている。  でも、結局のところ、三度三度の食事の準備は五月も手伝っているし、お昼と夜の洗い物だって、これまで通り五月がやっている。  義母の好むおかずだって、五月が圧力鍋で作っている。これまで通りの家事は五月もやっているのだ。  でも、三郎は何だか一人で全部しょい込んだ感じになってパニックになっている。  買い物などもみんなで行けばよいのに、結局のところ一人でさっさと行ってしまう。  三郎がいっぱいいっぱいなのは、五月も十分承知しているのだが、そういう一般的な用事とペットのお世話とでは別になると思うのだ。  普段のペットのお世話も、五月が義母を病院に連れて行っている日に忘れてしまっていた。  そして、昨夜、ペットの様子が変なので病院を予約すると言った時に、三郎は思いがけないことを言った。 「年を取って食べてないからでしょ?」  猫の体重が1Kg減るのは人間にしたら大変な事ではないかしら?  だったら、五月は義母の体重が減ったと三郎が心配したときに 「年を取って食べないからでしょ?」  と言い返してよいのだろうか。  人とペットを同列に置くなと言う方々もいるとは思うが、ペットの方が話せない分不利なのである。  その言い方に対して、文句を言うと 「すません。」  と返ってきた。それはいったいどういう気持ちなのかと聞くと 「どちらかと言えばどうでも良い存在。」  と返ってきました。  その冷たい言葉に、パニックになり涙が溢れた。  五月は三郎を信じているのに。    
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加