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わちゃわちゃしゃべっていると、無口な少年、シオが口を開いた。
「お前達、そろそろこの石化ドラゴンを退治するぞ」
そうだった。
このタンクドラゴンをいつまでもこのままにしておけない。
「へいへい」
「わかってるよシオ。そんな急かさないでよ」
三人がタンクドラゴンと向かい合う。
私はタロウくんと一緒に安全な場所へ移動した。
シオはそれを確認すると、石化を解除する。
再び動き出したタンクドラゴンに向かって、スエヒロとミヤコが確実に仕留められるように攻撃を開始した。
私は思わず身を乗り出した。
「すっご、攻略組の戦闘をこんな間近で見られるなんて」
「レアすぎるね」
と、タロウくん。
スエヒロが近接で攻撃し、ミヤコが遠方から弓で狙う。華麗で、隙がない。
なんか見惚れてしまう。さすが選ばれしエリート達。
ただただ感心している私たちの元に、シオが来た。
「あれ、シオは戦闘に参加しないんだ?」
「二人に任せておけば充分だ」
そして、私の目を見て言った。
「実は、俺はダンジョン攻略者として活動しているが、学生でもある。戦闘技術学校魔法学科の最高学年だ」
戦闘技術学校。略して戦技校。
ダンジョン攻略者を養成する、国内最大の機関だ。その魔法学科は特に難関だと聞いている。
攻略者でありながら、学生。
どっちももちろん片手間で出来ることじゃない。この少年が、とんでもなく有能であることは間違いない。
「アヤメ」
シオは言った。
「戦技校魔法学科に編入する気はないか」
「え」
何、いきなり。
突然の言葉に面食らう。
なんで私が、そんな難関校に誘われているんだろう。え、ほんとになんで?
隣でタロウくんが、興奮気味に言う。
「アヤメ先生が戦技校の魔法学科に?!それってすごくいい考えだよ!」
「俺から推薦しておく。そこの浮遊カメラの録画データも添えれば、編入試験を受けられるだろう」
私たちのそばをふよふよ浮かぶ浮遊カメラ。さっきの私の戦闘がバッチリ映っているというわけか。
「でも、そんないきなり」
「アヤメは今年16だろ、ミヤコから聞いたが。高等部編入の資格はある。今から筆記試験の勉強をして、面接試験の対策もするとなると忙しくはなるが」
その代わり、とシオは続ける。
「アヤメにその気があれば、ダンジョン攻略者への道も開けるだろう」
「うえっ?!」
ダンジョン攻略者?!
「で、でも深層や最深層に潜るなんて……」
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