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地下10階。
ここは階段を降りてすぐに大部屋がある。
たまにネオスライム群やホネ騎士団などの、集団で行動する魔物が人間を待ち伏せているのだが。
だが。
……あれは。
あれはちょっと、ないんじゃないか。
え、夢?
だって。
だって、大部屋の、奥。
奥に鎮座するのは……。
「タンクドラゴン!!!」
2人同時に叫んだ。
な、なんでこんなところに大型竜のタンクドラゴンが?!
普通は中層、50階付近にいる魔獣なのに!
なんで浅層に?!
わからん!!!
意味不明!!!
人間の軽く5倍はある体長。
タンクドラゴンはさらに横にもでかく、でっぷりとしている。
コロンとした見た目は意外と可愛いけど…。
けど。
でかすぎる。
「アヤメ先生、危ない!」
タロウくんが叫ぶ。
次の瞬間。
遠くにいた竜が、こっちに突進してきた。
ずどどどど、という地響きと共に。
輝く緑の鱗。
タンクドラゴンはその大きく重い体で獲物を押しつぶす。
その巨躯がこっちに向かっている。
こっちに狙いを定めて。
え? え? え?
何これ死ぬの?
「クリムゾンアロー!」
必死に、攻撃呪文を唱えた。
ほぼ脊髄反射。
放った魔法は、矢の如く空気を切り裂き、竜の額に突き刺さる。
タロウくんが、
「よしっ!」
と声を上げた。
だけど、
「目に当てるつもりだったのに!」
と、私は嘆いた。
今の場面で半端な攻撃は逆効果、敵を煽るだけになってしまう。
事実、竜は少し怯んだが、すぐに体勢を立て直し始めた。完全にこちらに狙いを定めて。
「アヤメ先生、今のうちに、早く!」
隙を突いて、私たちは階段へと急いだ。階段は狭く、タンクドラゴンは入れない。
早く、早く!
突進される前に!
タロウくんがたどり着いた。
私も続いて逃げ込んだが、次の瞬間、
「痛ぁ!」
脚に激痛が走った。
「アヤメ先生!」
あとちょっと、逃げ切れるところで、右脚に噛みつかれた。
マジで痛い。
魔力で強化した革製のブーツを履いているから、鋭い牙はかろうじて肉に辿り着いていない。だが強い力で肉を挟まれて単純に痛い。
次の瞬間。
竜が首を振り上げて、私を口から話す。
私の身体は宙を舞った。
ひいぃぃぃ!
落下する!
地面にびたーんってなる!
絶対痛いじゃん!
嫌だ嫌だ嫌だ!
びたーんってなりたくない!!
「防御魔法!」
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