三爺の被験者

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あくる日、伸一爺は洗面所で驚いた。 まつ毛が1センチほど上向きに伸びていた。 二重瞼で目がくりっとしていた伸一爺は目元ぱっちり、漫画の美少女のような目になった。 「わ~、おじいちゃん。チョーカワイ~」 中学生の孫のレミが面白がってネットにのせた。 バズりまくってとまらない。 昇爺は顔がこそばゆくて目が覚めた。 眉毛が10センチ以上伸びていた。 昔ヤンキーだった昇爺は眉毛をポマードでリーゼントみたいにセットした。 今ヤンキーの孫の譲二が叫んだ。 「じっちゃん。バリバリマジすげぇ!」 譲二がSNSに発信すると『夜露死苦!』の雨あられ。 延三爺は息苦しさで目が覚めた。 鼻毛が6センチくらい伸びていた。 娘の茉莉にハサミのありかを訊いてみた。 茉莉はユーチューバーでネイリスト。 作品を定期的にアップしている。 「うわぁ、お父さん素敵。血が騒ぐわ。がまんできないっ」 茉莉はパチンコ玉に金色のペイントを施し鼻毛の先につけてみた。 延三爺が禿げ頭を上下に振ると金色の玉がアメリカンクラッカーのようにカチカチ鳴った。 「すごいわ、お父さん。アートよ、ア・ア・トッ!」 その晩、酔っぱらった茉莉がユーチューブに動画をあげた。 次の日『いいね!』が100万回を超えていた。 明日は10日ぶりの麻雀ゲーム。 気分は遠足の前の晩。 完治は三人との再会を首を長くして待っている。
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