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こぎつね、カラスに弟子入りするの巻
「はうああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
なんなんだ。
「はうあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
だからなんなんだ。
「はうああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「ああもう、うっせええええええええええええええええ!」
俺は思わずカアアアア!と怒鳴ってやった。
俺はカラスだ、名前はまだない。この森に住む一匹狼である。いやカラスだけども。
今日もまったり木の実を食べてたら、突然縄張りの木の下に変な茶色いもふもふがやってきて、奇声を上げてきやがった。うっとおしいといったらない。しかも。
「なんなんだよ、お前!なんだよその目は!」
その茶色いモフモフこと、子狐は。もふもふのシッポを揺らしながら、俺様のことをキラキラした目で見上げてくるじゃないか。一体何なんだ、解せぬ。自分で言ってもなんだが、カラスってのは森でも町でも嫌われ者と相場が決まっているというのに。
「だって、かっこいいんだもん!」
子狐は地面に降り立った俺の周りを、ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる、落ち着きなく回った。
「この濡れたみたいな黒い羽、黒くて鋭い瞳!ていうか、本当にカラスさんって嘴も何もかも黒いんだねえ。かっこいい、すっごくかっこいいよ!」
「なんでそんな急に褒めてくるんだよ。おめえ、俺のことなんか何も知らねえだろうが。どっかで話したこととかあったっけ?」
「ううん、初対面。遠くでカラスさんが飛んでるのは見たことあるけど、話したことはないよ。でも、カラスさんのことはずっと知ってた。かっこいい飛び方、孤高の精神、賢い頭にどんな場所でも生きていける逞しさ!うんうん、やっぱりカラスさんだ、カラスさんこそふさわしい!」
だから一体、何の話をしているんだ。
困惑する俺に、子狐はにんまり笑って言ったのだった。
「だからね、カラスさん!ぼくを弟子にしてよ!」
一体何がどうしてそうなった。
俺は思わず、人間のようにずっこけてしまったのだった。
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