こぎつね、カラスに弟子入りするの巻

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「ぼくが狐だから……悪いことするはずだって、嫌な性格なはずだって、誰も遊んでくれないんだ。しかも、お前は悪役としても中途半端だ。他の動物のように武器もない。真っ黒でかっこいい体毛も持ち合わせちゃいない。そんな奴、誰も認めてやるもんかって」 「それで、悪役になろうと?」 「うん。だったらあいつらの言う通り、本物の悪役になってやろうって思ったんだ。カラスさんたちなら、その極意を知ってるはずじゃないかって」 「お前なあ……」  なんとなく事情は把握した。把握したが、だからはいそうですかと弟子入りを認めるわけにはいかない。  この子狐に同情はするが、そもそも俺様は悪役をやっているつもりなどないからだ。 「いいかボウズ。この森に、魔女の城なんてものはないんだぜ。だから俺も、仕える魔女とかそういうのはいねえの。町にいるカラスは人間のゴミを漁るからそれなりに嫌われてるだろうが、俺は町に行くことも少ないし人間のゴミ漁りもしねえ。つか、ゴミ袋の腐った魚とか食って腹壊すのはもうごめんんだしな……」  最近の人間のゴミはバリエーションの富みすぎている。変な着色料とか調味料も使ってるし、正直まずいとしか言いようがない。また腹を壊してゲリピーになるのもごめんだ。  そんなわけで、今はほぼ森から出ることがない。木の実が豊富にあるので小動物を襲うことも少ない。  カラスに悪役のイメージがあるのは否定しないが、悪役をやっているつもりはないのだ。 「いじめっ子どもを見返してやりたい気持ちはわかる。わかるが、やり方は考えなきゃならねえ。オオカミに食われそうになってたりしたら、パパとママが悲しむだろうがよ。目指すなら悪役じゃなくってな……」  そこまで言って顔を上げた時だった。俺の目に入ったのは、からっぽの切株。そう、さっきまで目の前に座っていた子狐がどこにもいない。 「ちょ、お前!?おい子狐、どこ行った!?」  あんな奴ほっとけばいい。自分は彼を弟子にとったつもりなどないし、面倒くさい子供の世話をするほど暇ではないのだから。  とはいえ、こんな中途半端な状態でいなくなられて面倒なことになったら寝ざめが悪すぎる。ただでさえあいつはオオカミに食われそうになったという前科があるのだから。 「ひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」  再び聞こえてきた奇声。  まさか、と思って俺は南の方へ飛んでいく。少し木立を抜けたところに見えてきたものは。 「何してんのおめえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」  黒い沼にはまりこんで、ばしゃばしゃと覚えている子狐の図。俺は目玉が飛び出すほどびっくりして、慌てて子狐のシッポに噛みつき、引きずり出しにかかったのだった。
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